p.43 抽出テキスト
11 心疾患の重症度と 望ましい管理施設基準 心疾患を有する女性の妊娠では,妊娠による循環動態,呼吸機能,血液学的・内分泌学的・自律神経学的変化などが加わる(第1 章1. 妊娠・分娩の循環生理:妊娠・出産における母体の変化を参照のこと)ことにより,背景となる心疾患の病態が修飾される25).また,出産時は循環動態が急激に変動する.この妊娠・出産時の変化に対する,母体・胎児の適応の程度は,母体の心疾患の重症度に応じて異なる.したがって,心疾患を有する女性の妊娠・出産管理体制は,母体の心疾患の重症度に大きく依存する.心疾患の多数を占める軽症心疾患の場合(NYHA 心機能分類I 度)は,一般の妊娠と同様に,妊娠・出産リスクは低く(レベルB),妊娠・出産時の循環動態の変化に十分に対応が可能である.循環器担当医のコンサルテーションを受けつつ,産科医が中心となり妊娠・出産を進められる(循環器を専門とする施設でなくても管理可能である) 5, 25, 58) (レベルB).しかし,中等症以上の心疾患(NYHA 心機能分類II 度以上,チアノーゼ性疾患の修復術後など)では,妊娠・出産時に心血管系合併症を生じる場合があり5, 25, 45, 194),胎児へのリスクも高い45, 66, 68, 195)(レベルB).したがって,中等症以上の心疾患を有する女性で,妊娠・出産のリスクが高いことが予想される場合は,計画的に妊娠する必要があり,妊娠後は循環器を専門とする施設で診療を受けることが推奨される.また,思春期や成人期を迎えた先天性心疾患を有する女性は,出産設備の整った成人先天性心疾患診療施設に紹介されることが,推奨され 表27妊娠中の薬物療法(その他) 分類一般名添付文書妊婦への 使用妊娠中投与の疫学研究評価妊娠総合評価妊娠転帰への 影響や管理上の注意授乳総合評価投与中の 授乳 ペニシリン系アンピシリン○ ○ アモキシシリン○ ○ セファロスポリン系セフトリアキソンおそらく安全である〇〇 アミノグリコシド系ゲンタマイシン初期:おそらく安全である中後期:ほかのアミノグリコシド系抗菌薬で聴覚神経への影響が報告されているが本薬剤での報告はない初期〇,中後期△〇 グリコペプチド系バンコマイシン初期:データなし中後期:データは限られる(感音性難聴や腎毒性はみられていない) △〇 表28 中等症の心疾患患者における妊娠・出産の管理を行 うための循環器を専門とする施設の基準1 循環器科を専門とする医師(循環器内科医,循環器小児科医, 心臓血管外科医など)によるコンサルテーションが,妊娠・出産時を通じて容易に得られる2 カテーテル・インターベンションや心臓外科手術が施行可能で あり,24 時間体制で心血管造影室や手術室が使用可能である(まれであはあるが,妊娠中の病態悪化に対し,カテーテル・インターベンションや心臓血管手術を緊急に行わざるを得ない場合がある) 3 麻酔科医が常駐(24 時間対応)し,中心静脈圧,動脈圧,肺 動脈圧などの連続モニターが可能であり,麻酔装置が常備されている.さらに,緊急帝王切開や無痛分娩に対応できる4 臨床工学技士の協力がつねに得られ,人工呼吸器,人工心肺装 置,大動脈内バルーンパンピング(IABP)装置,経皮的心肺補助装置を含む機器が,つねに使用可能である5 集中治療施設があり,各科医師,助産師,産科病棟看護師の協 力が得られる6 新生児科医が常駐し,分娩に立ち会える.妊娠22 週以降の病 的新生児,早産・低出生体重児管理が可能な新生児集中治療室(NICU)を備えている7 人工妊娠中絶を安全に行える8 分娩待機室が完備されている9 重症の母体や胎児の状態を観察でき,必要に応じて入院管理が 行える10 分娩室,分娩手術室を備えている11 心臓超音波検査(循環動態の変化を即時に的確に把握できる) が常時稼働できる12 高リスクの心疾患女性の妊娠・出産には,産科,循環器科,循 環器小児科,麻酔科,新生児科,心臓血管外科,内科関連各科,遺伝科,さらに,心疾患分野での経験のある看護師,コメディカルを含む総合したチーム医療を必要とすることが多く,その体制を備えていること(Warnes CA, et al. 1998 45),Therrien J, et al. 2001 66),Therrien J, et al. 2001 67),Therrien J, et al. 2001 68),Celermajer DS, et al. 1993 198),Allen HD, et al. 1992 199),Report of the British Cardiac Society Working Party. 2002 200), Dodo H, et al. 2003 201),Niwa K, et al. 2004 202),丹羽公一郎.2005 203), Marelli AJ, et al. 2009 204) より作表)