p.29 抽出テキスト
良好であると判断する(図2A).逆に,2 回以上みられない場合を異常(non-reactive NST)とする(図2B).一過性頻脈を認めない場合は,胎児に音響刺激を加えて観察する. CST は子宮収縮という低酸素ストレスが負荷された状況下での,胎児予備能の評価法である.自然子宮収縮またはオキシトシンの投与や,乳頭刺激による人工的子宮収縮を起こすことにより,胎児の遅発一過性徐脈出現の有無をみる.検査の適応は子宮胎盤循環不全が予想される高リスク妊娠,すなわち糖尿病,妊娠高血圧症候群,過期妊娠,胎児発育不全などである.CST の判定は,陽性(positive),陰性(negative),陽性でも陰性でもない(equivocal),不成功(unsatisfactory)の4 つに分けられる.10 分以内に子宮収縮が3 回あり,遅発一過性徐脈が全子宮収縮の半数以上にみられる場合は陽性とし,異常とする(図3).一方,10 分以内に子宮収縮が3 回あり,遅発一過性徐脈がない場合を陰性とし,99% の確率で胎児が1 週間生存できるといわれている.equivocal のとき,あるいは不成功のときは翌日再検査とする. 7.2 超音波断層法158, 159, 164) 超音波断層法を用いてBPS を観察する.これは呼吸様運動,胎動,筋緊張,NST,羊水量の5 項目からなるスコアリングシステムである.正常を2 点,異常を0 点として,その合計点により胎児の状態を評価し,4 点以下は異常と定義されている(表15) 164).BPS には,急性期と慢性期 のマーカーが混在し,NST における一過性頻脈の消失,呼吸様運動と胎動の減少,筋緊張低下などの変化は,急性期の変化と考えられる.これに対して羊水量の減少は,慢性的な低酸素状態時の血流再分配機構により,腎臓への血流が減少した結果,尿量の低下をきたすことで引き起こされると理解さられている. 羊水量評価法に羊水指数(amniotic fluid index: AFI)がある.これは,超音波プローブを母体の長軸に沿って垂直に置き,子宮が4 分割された場所でのそれぞれの羊水深度の和をセンチメートルで表したものである.AFI が5 cm以下の場合を羊水過少と判定する.AFI とNST を組み合わせた胎児評価法は,modified BPS とよばれ,どちらもよければそのまま経過観察,どちらかに異常があればCSTあるいはBPS などで評価する. 7.3 超音波ドプラ血流計測158, 159) 超音波ドプラ血流計測による胎児血流動態の評価法は,超音波入射角による補正を必要としないインデックスを用 いた波形分析が行われている.代表的なインデックスとして,S/D 比,抵抗指数(resistance index),拍動指数(pulsatility index)が知られているが,いずれも末梢血管床の血管抵抗を示す.血管抵抗が増大すれば拡張末期の血流が流れにくくなり,これらの値が増大する.拡張期血流の途絶や逆流が観察される場合には,予後不良な周産期事象が多くみられる(図4). 波形分析において考慮すべき因子に,胎児心拍数や呼吸様運動をはじめとする生体生理的活性(biophysical activity)や測定部位などがあげられる.対象血管は臍帯動脈・静脈,中大脳動脈,下大静脈,下行大動脈,子宮動脈などである.胎児発育不全症例に対する臍帯動脈,中大脳動脈の血流指標は胎児の状態との関連性が示されている. 7.4 胎児評価法の限界 前述の評価法,およびその他の各種胎児評価法の普及は,周産期死亡の減少に大きく貢献してきた.しかし,適切な運用にあたっては,陰性的中率は高いが陽性的中率は低く,偽陽性が多いという限界と問題点を理解しておく必要がある.NST,CST,BPS,modified BPS にて胎児の状態良好と判定したにもかかわらず,1 週間後に胎児死亡に至る例は,1,000 例あたりそれぞれ2~6.5,0.4,0.7~0.8,0.8と報告されている165). 7.5 胎児心疾患のスクリーニング 両親のどちらかあるいは両方が心疾患を有する場合,胎児に心疾患を合併する頻度が上昇することが知られているため(第1 章3.5 遺伝カウンセリングを参照のこと),先天性心疾患の高リスク群として,超音波検査による胎児心臓スクリーニングの適応と考えられている.なお,超音波検査も出生前診断の1 つであることから,検査前に患者本人・家族に対して十分な説明と同意を得ることがきわめて重要となる.また,わが国では母体保護法によって妊娠22 週以降の人工中絶は認められていない点にも留意する必要がある. 7.5.1 検査施行者 胎児心臓超音波検査に十分精通した検査者(産科医,小児循環器科医,または超音波検査技師)がスクリーニングさらには精密検査を施行するのが望ましい.現在,わが国で妊婦健診の際に施行されている産科超音波検査は,そ