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p.26 抽出テキスト

超音波検査による大動脈径の測定が望ましいとされ141),肺高血圧症患者では,入院管理とともに,頻回の超音波検査による肺高血圧評価が必要である.

分娩後にも,再度の循環動態評価が必要である.産科の1 ヵ月健診は全員が受診するため,検査を施行するよい機会である.妊娠・分娩による心血管系への生理的な影響は半年程度続き142),心疾患は産後1 年間の母体死亡原因の上位にあるため131),重症度に応じて産後も定期的な経過観察が必要である.とくに,周産期に心血管イベントを合併した症例では,産後慢性期のより早期に心血管イベントを発症しやすいことが知られており129, 130),注意が必要である.

5.2 放射線検査(胸部レントゲン, 心臓カテーテル検査,CT 検査)

胎児への放射線の影響は,線量と被ばく時の妊娠週数に依存する.線量にかかわらず,可能な範囲で,器官形成期は避けた方がよい.胎児被ばく線量が50 mGy 未満では,小児がん以外の放射線の影響はないとされる.小児がんの発症リスクは,自然発生率が0.3% であるのに対し,10 mGy で0.4%,50 mGy で0.6% に増加すると報告されている143).現在のところ,100 mGy 未満では,被ばくによる胎児の発達遅滞,中枢神経系障害,先天異常のリスクの増大は認められておらず,妊娠中絶の正当な理由にならない.診断手法から受けるおおよその胎児線量を表13 に示す49, 144).

一般に,胸部のように胎児から離れた部位の医学的に適応のある撮影または透視は,X 線機器が適切に遮蔽され, X 線ビームが絞られていれば,妊娠中でも安全に実施することが可能とされている.妊婦の心臓カテーテル検査・治療における胎児の被ばく量は,母体被ばく量の5 分の1 程度である.それでも,できるだけ胎児被ばく量を減らすために,透視時間の短縮はいうまでもなく,照射野の制限,フィルタの使用,腹部遮蔽などが推奨される49).また,妊娠中は冠動脈の脆弱性が増しているため,医原性冠動脈解離のリスクが高いことを知っておく145).

肺動脈血栓塞栓症や大動脈解離を疑う時には,造影CT検査を行う.ヨード系造影剤は,胎児の甲状腺機能に影響を及ぼす可能性が懸念されているが,胎児への副作用は,これまでのところ報告されていない146).

5.3 MRI 検査

妊娠中のMRI 検査は,放射線被曝を伴わない利点があり,妊娠中の単純MRI 検査による,胎児への副作用報告

はこれまでない144, 147).しかしながら,胎児への危険性(熱・騒音・磁場などの影響)の詳細についてはわかっておらず,とくに器官形成期には,必要最低限での施行が推奨される.

右心系の評価や,複合型先天性心疾患・術後症例などで心臓超音波検査による評価が困難な場合があるが,心臓MRI 検査はこのような場合であっても,心室容積や機能の評価に有用である.また,放射線被曝を伴うCT 検査の代替として,血管評価などにも利用できる.

造影MRI 検査で使用されるガリウム製剤は,胎児羊水サイクルに長期間とどまり,児への悪影響が示唆されているため,使用は避けた方がよい146, 147).

5.4 ナトリウム利尿ペプチド

ナトリウム利尿ペプチド(脳性ナトリウム利尿ペプチド[BNP],BNP 前駆体のN 端側フラグメント[NT pro- BNP],心房性ナトリウム利尿ペプチド[ANP])は,心不全の診断や重症度評価,予後予測目的に広く測定・利用されている148).

循環血漿量の増加を反映し,正常妊娠でもBNP は平均で2 倍程度増加するが,心疾患を合併する妊娠では有意に高値である149).心疾患を合併する妊娠66 例の検討では,妊娠中に心血管イベントを合併した8 例すべてにおいて,妊娠中の最大BNP 値が100 pg/mL を超えており,BNP ≦100 pg/mL は妊娠中イベント陰性的中率が100% であった149).先天性心疾患を合併する妊娠213 例の検討では,妊娠20 週時のNT pro-BNP 値>128 pg/mL が周産期心血管イベントの独立した危険因子であり,NT pro-BNP 値<128 pg/mL の陰性的中率は95% であった55).心不全の

表13 診断手法から受けるおよその胎児線量

胎児被ばく量(mGy)

胸部レントゲン(2 方向) 0.0005~0.01胸部CT/ 肺血管造影CT 0.01~0.66冠動脈造影1.5 *冠動脈インターベンションアブレーション3 *腹部CT 1.3~35

骨盤内CT 10~50 *造影回数や撮像枚数に影響されるが,母体被ばく量のおよそ5 分の1 (Regitz-Zagrosek V, et al. 2011

49),Tremblay E, et al. 2012 144)より作表)