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p.25 抽出テキスト

能の評価や,心電図評価を速やかに行う.そして,産科担当医にこの時点での状態を説明し,分娩前後も含めた妊娠経過観察時の注意点について情報提供する.循環器担当医は,周産期母体のダイナミックな循環器変化に精通し,変化に応じた迅速な診療が望まれる.

妊娠中の循環血漿量の増大に伴い,心機能低下症例や狭窄病変などの容量負荷に耐容性が低い病態では,心不全を発症しやすい.器質的心疾患では,循環血漿量の増大がピークを迎える妊娠20 ~30 週が妊娠中の心不全の好発時期である134)(第2 章8. 心不全を参照のこと).循環器担当医は,この時期に心臓超音波などを再検し,早期の分娩待機入院の必要性などを概ね計画する(第1 章5. 妊娠中の血行動態評価を参照のこと).原則として,病態の変化がとらえられたら,検診の回数を増やして1 ~2 週に1 回とするが,明らかな心機能低下や心不全徴候がみられた場合には,ただちに入院安静とし,必要に応じて治療を追加する.

妊娠中の不整脈は,妊娠初期には悪阻症状に伴い,中期以降は循環血漿量と心拍数の増加に伴い増悪傾向にある.また,循環血漿量の増加により,希釈性に低カリウム血症となる妊婦も多く注意が必要である.適時,ホルター心電図記録などを施行し,高リスク症例を抽出する.

妊娠中に心疾患が新たに診断される場合は,その緊急度に応じた対応が必要である.母体生命にかかわる大動脈解離や急性冠症候群,肺塞栓を疑う症例などでは,胎児に配慮して放射線被ばくや造影剤の使用・投薬を躊躇するのではなく,産科・循環器科などの密接な連携下に,母体優先で診療方針を迅速に決定・施行することがきわめて重要である.

分娩前後は劇的に母体変化が生じるため,modified WHO 分類II 以上であれば,循環器専門医のいる施設,とくにII~III,III,IV は専門施設での分娩が望ましい135).

一般に,産後1 ヵ月健診で産後の経過観察を終えることが多いが,一部の心疾患をもつ女性にとっては,以降も高リスクが続く.QT 延長症候群では,分娩から産後9 ヵ月のあいだにイベントリスクがもっとも高く136),Marfan 症候群における周産期大動脈解離は,産後にも多く発症する137).また,母乳分泌や育児労作・睡眠不足などは,心不全や不整脈合併症の誘因となりうる.高リスク症例では,産後も継続した経過観察が必要である. 5 妊娠中の血行動態評価

妊娠・出産に伴う循環動態の変化に対して,母体心臓の適応可否を見極めるためには,妊娠から産後を通じ,複数回にわたって循環動態の評価を行うことが望ましい.

5.1 心臓超音波検査

妊娠中の循環動態を評価するうえで,非侵襲的かつ情報量の多い心臓超音波検査は非常に有用である.妊娠による循環動態の変化に伴い,正常心においても心臓超音波検査上の各指標は変化する.前負荷の増加を反映し,左房容積は妊娠初期から増え始める138).左室径や壁厚も増加し,左室心筋重量は20 ~30% 増す38, 139).また,左室収縮能が不変あるいは増加する.一方,左室拡張能は,妊娠後期には僧帽弁通過血流速度のE 波(拡張早期波)の減高とA 波(心房収縮期波)の増高を認め,拡張能の指標であるE/A の低下が観察されている38).しかし,ほとんどの場合これらの変化は正常値の範囲内である.ほかにも,弁輪拡大と機能的な僧帽弁,三尖弁,肺動脈弁逆流や少量の心嚢液貯留は,通常の妊娠においてもしばしば観察される.また,妊娠による子宮の増大に伴い下大静脈が圧迫され,妊娠後期には右房流入部位の血管径が縮小していることが多い.仰臥位や右側臥位時の子宮の増大による下大静脈の圧迫は,心拍出量を減少させる.妊娠後期になると,仰臥位では左側臥位の3 割ほど心拍出量が減少する140).そのため,長時間の仰臥位や右側臥位は血圧低下をきすことがあり(仰臥位低血圧症候群),エコー検査時は,被験者の症状をこまめに聴取し,気分不良や血圧低下出現時には,体位変換などの対応をする.

心疾患合併妊娠においては,妊娠直前あるいは妊娠による循環変化がまだ軽微である妊娠初期に最初の評価を行い,次に,心負荷が最大に近づく妊娠第二期末に再検し,あらためて循環動態の評価を行う141).評価項目としては,心室の大きさと機能,各弁狭窄・逆流の有無と程度,三尖弁逆流や肺動脈弁逆流から推定される肺高血圧の有無と程度,心拍出量などの一般的な項目と,機械弁合併妊娠における弁機能評価や,Aortopathy 症例における大動脈径測定など,個々の病態に応じた項目があげられる.

高リスク患者や,自他覚症状の出現時には,必要に応じてさらに頻回の評価が必要である.上行大動脈径が40 mm 以上のMarfan 症候群の患者では,2 ~4 週間ごとに