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p.24 抽出テキスト

3.7.2 Aortopathy (第2 章4. Marfan 症候群とMarfan 類似疾患を参照のこと)

エストロゲンは大動脈壁のコラーゲンやエラスチン形成を抑制するため, Marfan 症候群にみられるような大動脈拡大を有する患者が妊娠・出産によってさらに増悪する可能性が指摘されている117).Marfan 症候群の患者では,出産後にも大動脈解離を発症する可能性が高いことが報告されている118).Donnelly らは69 例のMarfan 症候群の女性における199 回の妊娠の長期予後を検討し,妊娠中には非妊娠時Marfan 症候群の患者に比べ,大動脈径が有意に増大したことを報告している119).さらに約6 年間のフォローアップ期間中に,妊娠しなかったMarfan 症候群では,大動脈径は36 mm から37 mm とわずかな変化であったのに対し,妊娠したMarfan 症候群では,大動脈径は35 mmから43 mm に拡大していたことを報告している119).大動脈径が45 mm 未満のMarfan 症候群では,心血管イベントは比較的少ないとされているが,長期的生命予後に与える影響は今後も検討が必要である.

3.7.3 解剖学的右心室が体心室の患者

心房間転換術を受けた大血管転位症では,妊娠・出産によって体心室として働く右心室の機能不全,三尖弁逆流が増悪する可能性があることが報告されている120, 121). Zentner らは心房間転換術を受けた大血管転位症患者は出産後5 年間の心不全入院や突然死の頻度が非妊娠時と比べ増加することを報告している122).このように解剖学的右心室を体心室とする女性では妊娠・出産によって,体心室機能や房室弁逆流が低下もしくは悪化する可能性があることを念頭に,妊娠前の心機能評価には注意を要する必要がある123, 125).妊娠前より体心室機能不全が疑われる患者では,妊娠・出産により心機能がさらに低下する可能性がある.

3.7.4 Fallot 四徴症術後

妊娠時に安定した状態であるFallot 四徴症術後患者の妊娠・出産時リスクは比較的少ないとされているが,長期予後に関する情報は限られている.Kamiya らは25 人のFallot 四徴症術後例40 出産での検討を行い,妊娠中に拡大した右心室径は出産後6 ヵ月を経過しても改善しなかったと報告している126).一方,妊娠・出産によって右心室容量は拡大するものの,右心室機能は維持されるとの報告もある124).Fallot 四徴症術後症例の妊娠・出産症例は多く,心機能評価のみならず不整脈発生についても管理・評価が必要である. 3.7.5 その他

DCM で心室機能低下のある女性では,妊娠自体が心機能の短期的予後に悪影響を及ぼすという報告があるが127),異なる報告もある128).大動脈狭窄の女性が妊娠を経験することで,心血管イベントを発生する可能性が高くなるとの報告がある117).妊娠中に心血管イベントを経験した心疾患合併女性は,妊娠後にもイベントが起こりやすくなる可能性がある129, 130).

妊娠が長期予後に与える影響については,十分なエビデンスがないことを,心疾患を有する女性には伝えておくべきである.

4 母体経過観察基準

心疾患合併妊娠では,妊娠出産に伴う母体の生理的変化により,心不全・不整脈・血栓塞栓症や大動脈解離などの心血管合併症を併発する危険性を伴う.英国,日本の母体調査報告によると,心疾患は,母体間接死亡原因の上位にあり131, 132),妊娠の際にリスクの高い症例では,産科医,循環器を専門とする医師,麻酔科医,新生児科医,助産師や看護師らを中心とする学際的専門性をもつチームによる,継続的な経過観察が必要である133).

妊娠前に心疾患を診断されている症例では,妊娠前カウンセリングなどを通じ,妊娠前からの情報提供や経過観察が好ましい.妊娠の際,合併症のない妊婦の定期健診スケジュールは,おおよそ妊娠11 週末までに3 回程度,12 週から23 週末までは4 週ごと,24 週から35 週末までは2週ごと,36 週以降は1 週ごとが標準的である.これを基本として循環器担当医は,個々の心疾患の重症度,すなわち妊娠時のリスクレベル(第1 章3.1.2 妊娠リスク評価を参照のこと)に準じた経過観察のスケジュールを組み立てていく.一般に重症度が高まるほど,健診時には両科を同日受診することが多くなり,情報の交換を密に行うことが必要となる.すなわち,低リスクの心疾患患者(modified WHO 分類I,II)の妊娠の場合は,必ずしも妊婦健診ごとに循環器外来も受診する必要はないが,中~高リスクの心疾患患者(modified WHO 分類II,III,IV)の症例では,頻回な経過観察を行っていく.

産科医は,妊娠初診時に既往歴や家族歴,現症の十分な聴取を行い,基礎疾患専門医の受診へとつなげる.循環器を専門とする医師は,心疾患の重症度にかかわらず,妊娠が判明した時点で心臓超音波などによる心形態および心機