p.13 抽出テキスト
看護師の参加協力がなされ,チームとして各専門領域からの情報提供や相互理解が確認されていく.患者も含め,とくに専門領域間で情報を懇切丁寧に交換することは,非常に大切である.循環器担当医からの情報提供は,基礎心疾患の診断名と循環動態の現状報告だけでは不十分である.既往手術の術式と説明,内服薬,予測可能な心負荷のパターン,不整脈とその対処法,長年の経過観察によればこそ把握できる患者の性格や心理状態,今回の妊娠が今後の心疾患の予後に与える影響,出産時同時避妊手術に関する検討などにわたり,細やかな連携を展開するうえでの情報発信源となる必要がある. 3.1.2 妊娠リスク評価 医学的にもっとも重要なカウンセリング内容は,妊娠リスク評価17)である.想定されるあらゆるリスクについて正確に把握し,それに対する最善の戦略を確立する必要がある.そして,患者と家族が理解・納得し,おおまかなイメージを形成できるように導き,医療側と患者側が協力して妊娠経過が進められるように努める. リスク評価法について種々の研究がなされてきたが,現在のわが国の心疾患診療の実情においては,modified World Health Organization(WHO)分類48, 49)を基本とし,これにわが国の現状を加味した概念がもっとも適切であると考えられる(表4).[レベルC]リスク評価のためのスコアリングは,対象とする母体の疾患の種類や医療事情の違い(国家間の差異)などにより,わが国の実情と合致しないことがあるため,わが国ではまず表4 の日本版modified WHO 分類でリスクを位置づけ,必要に応じ,CARPREG II リスクスコア29a)(表5),ZAHARAリスクスコア50)(表6)を適応させると,総合的に,より広い視野でのリスクが把握できる.そして,各施設における経験度や専門性を加味することで,その医療施設での管理可能な症例,リスクランクが客観的かつ現実的にまとめられる.[クラスIIa] また,現在はその次の段階として,欧州を中心としたthe registry on pregnancy and cardiac disease(ROPAC) 51)を はじめとする症例登録制度を強化し,臨床像を具体化する統計情報のみならず,種々の多施設研究,さらに真の高リスク患者を対象としたリスク評価や管理に特化した研究も始められている52–55).すなわち,先天性心疾患のなかでも複雑型に対する高度な修復術後(Fontan 術56)など),比較的単純型を対象とするが,そのなかでも高リスクとなる要素をもつ場合(例:心房中隔欠損[ASD]の術後で肺動脈性肺高血圧症57))の妊娠である.[レベルC] 3.2 心疾患をもつ男女共通の問題点 先天性心疾患患者の調査では,既婚率は女性のほうが男性よりも高い3).心疾患患者,とくに女性の結婚年齢は一般女性と比較すると若いとする報告もあるが,近年は結婚前にまず就職を考える女性が増加しているため,結婚・妊娠後に疾患の悪化する可能性を考慮しつつも,社会人としての背景も念頭にいれて,個々の人生設計を立てることが多い.男性は,妊娠・出産時のリスクはないが,それ以外の問題点では女性と共通することが多い. 3.2.1 性行為,妊娠のしやすさ 重症心疾患であっても,一般と変わらず,男女ともに性行為は可能である58).心疾患をもつ女性に避妊が必要になることがあるのは,性行為自体が危険だからではなく,妊娠後の妊娠継続・出産,出産後のリスクが高いからである.心疾患患者は,性行為に積極的でない場合が多い.この原因の1つは,性行為や妊娠・出産に関する適切なカウンセリングを受けていないためである. 基本的には,先天性心疾患の女性は,健常者と比べて,月経の周期,月経持続期間,出血量,安全性などに差はみられない.しかし,チアノーゼ性心疾患や外科手術回数が多い先天性心疾患では,月経異常や無月経の頻度が高いとする報告もある59).また,チアノーゼのある女性は月経の出血量が多い.非チアノーゼ性先天性心疾患では,妊孕能(妊娠のしやすさ)は健常者と同様であるが,Fontan 術後やチアノーゼ性先天性心疾患では,月経異常と妊孕能の低下が指摘されている59–61). 3.2.2 遺伝 心疾患をもたない親から心疾患を有する子が生まれる頻度と比べて,親子間での心疾患の繰り返し頻度は高い.母親が心疾患をもつ場合は,父親の場合よりも高率となる.多くは多因子遺伝によるとされており,飲酒や喫煙,向精神薬の内服などの,既知の要因に対する注意喚起も必要である.(第1 章3.5 遺伝カウンセリングを参照のこと). 3.2.3 育児/ 社会生活/ 保険 心疾患女性は,出産後に心不全や不整脈などを併発したり,心臓の状態が悪化したりすることがある.このため,出産後しばらくのあいだ,育児を行うことが難しい場合がある.中等症以上の心疾患をもつ女性の場合は,出産年齢は30 歳代よりも20 歳代のほうが,また,出産回数が少ないほうが,より妊娠・出産に耐えられる58).心疾患男性の