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者や,血栓形成により重大な合併症(脳塞栓や肺塞栓など)を起こすリスクのある患者では,とくに注意が必要である. 1.3 呼吸機能の変化 妊娠中の呼吸生理機能は,母体の呼吸状態および胎盤における母体―胎児間のガス交換を反映する.妊娠の進行に伴い胸式呼吸から腹式呼吸へと変化する.予備吸気量,一回換気量,肺活量は増加するが,予備呼気量,残気量は減少する.安静呼気時の肺容量(機能的残気量)は,妊娠子宮による横隔膜の上昇により低下する.一方,吸気容量は増加するため全肺気量はほとんど変化しない.妊娠中の内分泌学的変化により末梢気管支は拡張するが,主気管支の拡張性が変化することはない.妊娠前期より,プロゲステロンの呼吸中枢に対する直接作用として分時換気量を増加させ,妊娠末期にかけて増加していく酸素消費量に対応する.呼吸数の増加,および酸素消費量の増加を上回る心拍出量の増加による動静脈酸素分圧較差の低下によって,動脈血酸素分圧は上昇する.呼吸数の増加と二酸化炭素分圧の低下は,腎臓での重炭酸の排出を促進させ,代償性呼吸性アルカローシスとして血中pH は正常域に維持される.妊娠後期には労作時の分時換気量と酸素消費量は最大となるが,予備呼吸量は維持されるため,労作が制限されることはない.動脈血酸素分圧は肺胞レベルの換気量増加によって上昇する.一方,動脈血二酸化炭素分圧は低下し,胎盤レベルでの胎児から母体への二酸化炭素の移動が促進させる25–27). 1.4 血管壁の変化 妊娠中はエストロゲンやエラスターゼの影響で,血管壁の構造にも明らかな変化が生じ,その脆弱性が増す.大動脈壁の中膜には,細網線維の断裂,酸性ムコ多糖類の減少,弾性線維配列の変化,平滑筋細胞の増殖と過形成が認められる.これらの変化により,妊娠中の大動脈径は軽度増加し,動脈壁のコンプライアンスは低下する.一方,これらの変化は大動脈壁の脆弱性を増加させるため,上行大動脈拡大を伴うMarfan 症候群などでは,大動脈解離を引き起こす危険性がある42–44). 2 妊娠前の検査項目 妊娠年齢の心疾患女性が,妊娠・出産時の変化に十分に適応できるかどうか,妊娠前に予測する必要がある.その ため肺動脈圧,心室機能,大動脈径,チアノーゼ,NYHA心機能分類などを把握することは,母体・胎児の合併症を予測するうえで重要である.これらの評価を行うための妊娠前検査には,病歴,診察,胸部X線,心電図,心臓超音波などが含まれ,必要であれば,心臓カテーテル検査も行う.心機能の予備能が低下していると考えられる場合(NYHA 心機能分類II 度以上の場合,あるいはI 度でも左室駆出率が低下している場合や,大動脈弁狭窄の場合など)は,心肺運動負荷テストを行う.運動負荷テストは,妊娠後期と同様の循環動態に対応できるか判定できるため,心機能の予備能の客観的評価法として有用である45, 45a).不整脈を認める場合は,ホルター心電図記録を行う.また,大動脈拡張を生じやすい疾患(Marfan 症候群など)で,大動脈の評価が十分でない場合は,心臓MRI や心臓CTなどを行う46).これらの検査所見を組み合わせて,妊娠リスクを予測し,患者と妊娠について十分に話し合うことが重要である.(第1 章5. 妊娠中の血行動態評価を参照のこと) 3 妊娠カウンセリング 3.1 心疾患をもつ女性の妊娠カウンセリング 3.1.1 情報提供の原則 心疾患患者の妊娠・出産時の問題点,安全性などについては,妊娠前にカウンセリングを行うことが望ましい17, 47).妊娠前カウンセリング(pre-pregnancy counselling, preconception counselling)は,妊娠可能年齢である思春期以降,たとえば中学生頃から心臓定期検診で親とともに外来受診をするときなどを利用して,シンプルなコメントから開始するとよい47).女子学生を対象とするわけであるから,個々の性格や日常生活環境などを考慮しつつ,最初は「妊娠に耐えられる心臓であるかどうかを調べてから妊娠へ,という順序である」ことを教育する.毎年,定期検診のたびにその一言を伝え続けておくことや,同席している親も,ともに共有していくことが大切である.やがて,成人年齢に達する頃には,1 人で定期心臓外来の受診をするようになるので,通常の心臓の状態を説明するのに加えて,妊娠を考える場合のプランを説明するとよい.心臓カテーテルレベルの精査評価をしておいてから妊娠へのス